鍼灸師として見過ごすことはできない記事があったのでご紹介したいと思います。
鍼治療について検索していたところ、Forbesという雑誌の鍼治療についての記事が出てきました。
それがこちら。

なになに、絶対に受けてはいけない鍼治療?
こんな馬鹿げているエセ医学??
こんなこと書かれたら反論したくなっちゃうのが鍼灸師ってもんです。
今回はこの記事の内容について反論していきたいと思います。
人体に外を及ぼす10の鍼治療
そんな見出しで紹介されている10の症状をざっと書いてみます。
- 妊婦
- 子宮類線維腫
- 過敏性腸症候群
- 滲出性中耳炎
- 男性における下部尿路の症状
- 高ビリルビン血症
- 手根管症候群
- うつ病
- 変形性関節症
- ベル麻痺(顔面神経麻痺)
これらに対してForbesの記者は絶対に受けてはいけないと言います。
科学的にもその証拠はでているとも。
さあ、本当にそうでしょうか?
ぱっと見る限り全てとは言いませんが鍼治療が有効なものも多くあります。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
妊婦
ここでは【陣痛誘発】だけをとりあげて効果はないと批判し、妊婦は受けるべきではないと言っています。
そもそも陣痛誘発を求めて鍼を受ける人ってほぼいませんよ…。
僕も10年以上やっていて陣痛誘発を望まれたのはたった2人だけです。
効果があったのかどうかはわかりませんがとりあえずその後無事に出産できていました。
今はっていうか以前から陣痛誘発剤っていうのがありますから、基本的には医師と相談してみたらどうですか?と提案します。
他の鍼灸師もそうだと思います。
鍼灸師だって医師だって効果があるんだかないんだかわからないものを勧めることはないですよ。
それを「意味のない鍼治療は推奨されない。」なんてドヤ顔で言われてもねぇ…。
ちなみに当院の話ですが妊娠中の方が鍼灸を受けに来るのは
- 逆子
- つわり
- 肩こりや腰痛など体の痛み
これらの緩和、改善を求めてです。
妊娠中の体調がよくなるだけじゃなく産後の体調もぜんぜん違うと喜ぶ方も多いですから妊娠中の方はぜひお灸を試してみてほしいですね。
子宮類線維腫
子宮類線維腫というのは簡単に言えば子宮筋腫のことです。
鍼治療で改善、治癒できるという証拠は今のところ存在せず、他にも有効な治療手段があるのだからそれをするべきだ、というのがForbes筆者の意見。
正直これに関しては僕も同意見です。
でも鍼治療をすることが全く無意味とは考えませんけどね。
鍼治療が血流改善、ストレス緩和することに関しては科学的にも証明されていますから、ある一定の効果は期待できると思います。
なので病院での治療と併用してもいいのではないかなと。
過敏性腸症候群(IBS)
IBSは慢性的な胃腸疾患で腹痛、腹部の不快感、下痢や便秘を繰り返すなどの特徴があります。
投薬治療もありますが鍼灸を使って治療する患者さんもいらっしゃいます。
当院にもたまにですがIBSの方来られますし。
ただ現段階では科学的には鍼灸における効果というのはプラシーボの域をでないと結論付けられています。
患者が鍼治療を好むかどうかでその効果が変わるといわれており、鍼治療が薬物療法よりも効果的というのは今後の研究で明らかになるかもしれません。
重要なのはIBSにプラセボ効果がしばしば見られ、患者自身が良いと思い込むと症状が改善するということです。
なので科学的にまだ効果の証明がなくても、例えプラシーボ効果だとしても患者さんが良いと感じるのなら鍼治療もやはり効果的と言えるのではないでしょうか?
滲出性中耳炎
これは鼓膜の奥に水が溜まってしまう疾患で、子供によく見られます。
そもそも滲出性中耳炎で最初に鍼灸を受けさせようとする親がいったいどれほどいるでしょうか。
正直ほぼいないと断言できます。
なぜかと言うと病名があり薬がちゃんとあるんですからそれを優先するのはごく当たり前の話です。
では滲出性中耳炎に対して鍼灸がまったくなにもできないかと言えばそれは違うとは思います。
鍼灸をすることにより水が溜まりにくくなったり、繰り返し起きていた中耳炎が治まるという例はよくあります。
専門医の診断や治療は必要ですが鍼灸はそのサポートに十分なると考えられます。
とは言っても僕も2人の子供の親ですからわかるんですが、子供はじっとなんてしていられないから鍼灸は基本的に難易度高いです。正直な話。
男性における下部尿路の症状
男性下部尿路症状の代表的なものは前立腺肥大です。
これに関して鍼灸が効くかはわかりません。
しかしその症状、例えば頻尿や残尿感においては鍼灸で効果を出せます。
個人的には鍼灸ひとつで治療するのは時間もコストもかかるので理由があって薬が飲めないなんて人以外にはあまりおすすめしません。
薬と併用することが一番いいのではないかという考えです。
効果はないなんて断言するのはひろゆきっぽく言えば…
「それあなたの意見ですよね?」って感じです。
実際に鍼治療で効果を実感する人は一定数いると思いますよ。
西洋医学、科学的な観点から言えばそもそもの原因である「前立腺肥大」がなくなることが効果あるってことになるので、まあそういう意味で言えば効果ないってなるのかもしれません。
高ビリルビン血症
新生児に多く見られる症状です。
これに鍼治療は効果ない!とかドヤ顔で言わんでほしいですよ。
あたりまえだろ!!
ていうか新生児の病気に鍼灸やろうとするやつなんかいねーよ!!
手根管症候群
手根管症候群はたまにですが鍼灸院で鍼治療することがあります。
病院で行う治療は注射、薬、レーザー治療というのが基本で、鍼灸院に来られる方はそれらに効果を実感できなかった方です。
ひどい場合は手術となりますが手術をするレベルというのは麻痺が起きていますからそもそも鍼灸でどうにかしようと思う人はあまりいないんじゃないかなと。
いたとしてもお茶碗が持てないとか握力ないとか言われたら即病院勧めますけどね。
他の鍼灸師も麻痺がある方に対してはおそらく病院でドクターと話し合ったほうが良いとアドバイスするかと思います。
まあ手術が必要になる方というのはあまり多くはないので痺れや痛みに対しては鍼治療が効果的です。
薬の効果に個人差があるように鍼灸にも効果の個人差があります。
改善の望みが薄いかどうかは個人差があるので数回、鍼治療やってみて明らかに効果が実感できるのなら継続していいと思います。
うつ病
うつ病は確かに難しいです。
そもそもうつ病の症状というのは非常に多く、全てにおいて鍼治療で効果が出せるかと言えば正直難しいですよ。
しかしうつ病の症状には体の緊張からくるめまい、頭痛、耳鳴り、肩こりなどがあったりします。
これらは鍼灸治療で緩和させることは可能です。
うつ病の方が鍼治療によって体の緊張が取れて、気持ち的にも上向きになれるのは当院でもよくあります。
多少なり力にはなれるのは確かです。
変形性関節症
以前、膝専門の病院に行きたいから紹介状を書いてほしいという方がいらっしゃいました。
今でも定期的に来られる方なんですがその時は歩くのも痛みがでるほどでした。
鍼灸院の紹介状でも良いのかな?と尋ねたんですが問題ないとのことだったので紹介状を書いてお渡ししました。
その後、診断結果を持って患者さんが来られて話を伺ったところ、ドクターがこういったそうです。
「変形自体はさほどひどくない。痛みの原因は膝周りのコリが原因だからしっかりほぐすようにしてください。」
ドクターが膝周りの筋肉のコリが原因なんて言うのは意外だったので驚いたのを覚えています。
数ヶ月ほどかかりましたが今ではテニスを楽しめるくらいには改善しました。
この例からわかるように変形性膝関節症と言っても場合によっては鍼灸で改善できるということです。
変形自体はどうにもできないのは当たり前ですが膝周りの筋肉の緊張をほぐすことで歩きやすいように、痛みを軽減することはできるんです。
これをプラシーボとしか考えられないのは記者の頭に筋肉という存在が抜け落ちているからでしょう。
ベル麻痺(顔面神経麻痺)
ベル麻痺に関しては鍼灸が効果ある話はよく聞きますしネットでも目にします。
このForbesの話では、研究では8件の試験で効果がまったくなかったとのこと。
正直ベル麻痺は珍しくない病気で結構多いですから、たった8人?の試験で結論づけるのはそもそも鍼灸に否定的だからでしょうね。
病院での診断や治療はもちろん必要と思いますが鍼灸でさらに改善スピードを上げることは可能です。
まとめ
というわけでForbesの記事に反論してみました。
この筆者は効果がありそうな症状には無視を決め込み、全く効果がないとわかっているものだけを対象にして鍼治療は絶対に受けてはいけないなんて言っていることがよくわかりましたね。
現代の素晴らしく発達した医学や薬学を差し置いて鍼灸で全てを治そうとするのはさすがにナンセンスと思うのは僕も同じです。
しかし鍼灸の歴史は2000年以上あり、多くの症状に対して対応できることもまた確かなんです。
鍼灸は素晴らしく効果のあるものですが効果がだせないものだってもちろんあります。
けど鍼灸をはなっから全否定するのはとてももったいない。
今、世界中で鍼灸の需要が高まっています。
イギリスのチャリティ団体モクサアフリカが、お灸により結核患者の体調を良くするための活動を行っていますし、実際それは結果を出しています。
モクサアフリカについて知りたい方はこちらをどうぞ。

また、アメリカやヨーロッパでも鍼灸は需要が高まってきています。
薬では効果があまりなかった病気や症状に鍼灸なら効果があったというのがどんどんでてきて、鍼灸の良さが理解され始めたからです。
日本では未だに痛そうとか熱そうとかネガティブイメージが先行しているのでなかなか受療率が増えませんが、おそらく今後多少なり増えていくでしょう。
このForbesの記事だけを見るとあまり良いイメージがわかないと思いますが、ネットでちょっと調べてみたら鍼灸がいかに世界で必要とされているかわかるはずです。
西洋医学と東洋医学、両方のいい面を理解してそして利用して、人生を楽しく過ごせるようにしたいですね!
以前にお灸の良さや自分でのやり方を解説した記事を書いているので興味ある方はこちらも是非どうぞ!
お灸の効果、セルフ灸のやり方などベテラン鍼灸師が疑問にお答えします!

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